【ドキュメント・タリバン支配】(07) 現地取材で見た市民の今
アフガニスタンでイスラム主義組織『タリバン』が昨年8月に20年ぶりに復権してから、今月15日で5ヵ月が経った。記者は昨年11月末から首都のカブールに1週間滞在し、政変に翻弄される人々や報道機関、女性を取り巻く状況等をルポし、本連載で記事に纏めた。今回は、そこに盛り込めなかった取材時の生々しいやり取り等を、特別編として報告する。
アフガニスタンを訪ねるのは、タリバンが各地で攻勢を強めていた8月初旬以来だった。カブールの国際空港の滑走路に降り立つと、冷たい風が吹き付け、厳しい冬の到来を感じさせた。記者が暮らすインドの首都、ニューデリーも大気汚染が酷いが、カブールの街では排気ガスのような独特の臭いが鼻をつく。現地では「きちんと精製されていない安価な燃料を使う車が多いのが原因だ」と言われている。カブールでの取材は2018年以降で4回目。この臭いを嗅ぐと、いつも一気に目が覚めるような緊張感を覚える。アフガニスタンでの取材は、テロや誘拐に巻き込まれるリスクと隣り合わせだからだ。「周囲に気を配り、決して気を抜かない」。今回もそう自分に言い聞かせ、覚悟を決めた時だ。携帯電話の電源を入れると、“カブールで爆発が発生”というニュースが飛び込んできた。「早速来たか」。直ぐに空港の入り口で待つ助手と電話で連絡を取り、周囲の安全状況を確認した。「爆発音はここでも聞こえたが、現場は離れている。取材には問題ない」。助手と落ち合い、車で街に出た。幸い、爆発による死傷者はいなかった。外出する際は大抵、シャルワルカミーズという現地服と、パコールと呼ばれる民族帽を着用している。移動で利用するのは、日本では廃車になるような古い車だ。アフガニスタンでは外国人が誘拐等の標的になる可能性が高く、人目を引くのを避けることが重要だ。日本人の容姿は、モンゴル系の血を引くとされる少数派のハザラ人と似ており、こうした格好をしていれば現地に溶け込み易い。地元のダリ語で話しかけられることもしばしばあった。
『国連アフガニスタン支援団(UNAMA)』によると、タリバンの復権後、過激派組織『イスラミックステート(IS)』系の『ISホラサン州(IS-K)』が活動を活発化させている。IS-Kの活動地域は嘗ては幾つかの州に限定されていたが、現在はほぼ全土に拡大した。また、2020年のIS-Kによる攻撃は60回だったが、2021年は11月中旬までで330回を超えた。昨年8月末にアフガニスタンから完全撤収したアメリカ軍等は、IS-Kの台頭に懸念を強めている。国際社会はタリバンにどの程度の治安維持能力があるのかを見定めている段階だろう。但し、カブールで取材した限りでは、8月以前よりも治安は改善された印象を受けた。話を聞いた多くの市民も同様のことを言っていた。これまでゲリラ的に政府軍等を攻撃していたタリバンが、テロを取り締まる側になったことが大きいのだろう。8月初旬にカブールに滞在した時は、ほぼ毎日のように街のどこかで爆発等があった。犯行声明は出なかったが、タリバンが関与したと疑われるものも少なくなかった。また、宿泊したホテルの近くにある国防大臣代行(※当時)の居宅で、タリバンの戦闘員と政府側との銃撃戦が数時間続き、市民を含む複数の死傷者が出たこともあった。この時はいつでも避難できる準備を整え、銃声や爆発音が鳴り止むのを部屋で待っていた。だが、今回の約1週間のカブール滞在中、把握している限り、複数の死傷者が出るようなテロはなかった。一方、取材した複数の市民は「タリバンが“ISを掃討する”という名目で、敵対したアシュラフ・ガニ政権や政府軍関係者に報復している」と明かした。“IS掃討”を理由にすれば、超法規的な襲撃や殺害も許されるというわけだ。こうしたことが実際に起きているかどうかは判然としないが、恐怖を感じている市民が多数いるのは間違いない。アフガニスタンは“文明の十字路”と呼ばれ、古くから東西の交易路として栄え、多様な人種が共存している。経済の窮状を反映してか、以前より子供の物乞いが増えた印象を受けたが、車の窓ガラス越しにお金を求めてきた一人の少年は、青い瞳で金髪だった。本来は豊かな文化を持つ国が、事実上、40年以上も戦乱状態にあり、貧困と混乱に苦しんでいる。旧タリバン政権下の2001年に破壊されたバーミヤンの大仏に代表されるように、遺跡も多く、治安さえ安定していれば観光産業も盛んだっただろう。1960~1970年代のカブールには、欧米等からも多くの若者らが訪れた。ここに来るといつも、今の窮状にやりきれなさを感じる。そして、これまでとの最大の違いは、街の至る所にタリバンの旗が掲げられ、タリバンの兵士が堂々と通りを歩いていたことだ。政府機関の建物は、タリバンの攻撃に備えてコンクリート製の高い防御壁に囲まれていたが、今はその監視塔からタリバンの兵士が下を見下ろし、警戒している。テロリストとされた人々が統治者に変わったわけだが、その違和感は簡単には拭えなかった。一方で、橋の下や道路の中央分離帯にしゃがみ込む男たちの姿は、以前と変わらなかった。地元ジャーナリストによると、車座になって麻薬を使っているのだという。アフガニスタンは、アヘンやヘロインの原料となる芥子の世界最大の生産国だ。世界の生産量の8割以上がアフガニスタン由来とされる。タリバンは芥子農家からの上納金や密売の収益を資金源の一つにしていたとみられ、国連は麻薬ビジネスでタリバンが2020年に得た収入は約506億円に上ると推計している。ただ、タリバンは実権掌握後、麻薬の製造や密輸をゼロにする方針を表明。複数の海外メディアは、タリバンが麻薬常習者を強制的にリハビリ施設に入れる等していると報じていたが、問題の解決には程遠いと感じた。
アフガニスタンを訪ねるのは、タリバンが各地で攻勢を強めていた8月初旬以来だった。カブールの国際空港の滑走路に降り立つと、冷たい風が吹き付け、厳しい冬の到来を感じさせた。記者が暮らすインドの首都、ニューデリーも大気汚染が酷いが、カブールの街では排気ガスのような独特の臭いが鼻をつく。現地では「きちんと精製されていない安価な燃料を使う車が多いのが原因だ」と言われている。カブールでの取材は2018年以降で4回目。この臭いを嗅ぐと、いつも一気に目が覚めるような緊張感を覚える。アフガニスタンでの取材は、テロや誘拐に巻き込まれるリスクと隣り合わせだからだ。「周囲に気を配り、決して気を抜かない」。今回もそう自分に言い聞かせ、覚悟を決めた時だ。携帯電話の電源を入れると、“カブールで爆発が発生”というニュースが飛び込んできた。「早速来たか」。直ぐに空港の入り口で待つ助手と電話で連絡を取り、周囲の安全状況を確認した。「爆発音はここでも聞こえたが、現場は離れている。取材には問題ない」。助手と落ち合い、車で街に出た。幸い、爆発による死傷者はいなかった。外出する際は大抵、シャルワルカミーズという現地服と、パコールと呼ばれる民族帽を着用している。移動で利用するのは、日本では廃車になるような古い車だ。アフガニスタンでは外国人が誘拐等の標的になる可能性が高く、人目を引くのを避けることが重要だ。日本人の容姿は、モンゴル系の血を引くとされる少数派のハザラ人と似ており、こうした格好をしていれば現地に溶け込み易い。地元のダリ語で話しかけられることもしばしばあった。
『国連アフガニスタン支援団(UNAMA)』によると、タリバンの復権後、過激派組織『イスラミックステート(IS)』系の『ISホラサン州(IS-K)』が活動を活発化させている。IS-Kの活動地域は嘗ては幾つかの州に限定されていたが、現在はほぼ全土に拡大した。また、2020年のIS-Kによる攻撃は60回だったが、2021年は11月中旬までで330回を超えた。昨年8月末にアフガニスタンから完全撤収したアメリカ軍等は、IS-Kの台頭に懸念を強めている。国際社会はタリバンにどの程度の治安維持能力があるのかを見定めている段階だろう。但し、カブールで取材した限りでは、8月以前よりも治安は改善された印象を受けた。話を聞いた多くの市民も同様のことを言っていた。これまでゲリラ的に政府軍等を攻撃していたタリバンが、テロを取り締まる側になったことが大きいのだろう。8月初旬にカブールに滞在した時は、ほぼ毎日のように街のどこかで爆発等があった。犯行声明は出なかったが、タリバンが関与したと疑われるものも少なくなかった。また、宿泊したホテルの近くにある国防大臣代行(※当時)の居宅で、タリバンの戦闘員と政府側との銃撃戦が数時間続き、市民を含む複数の死傷者が出たこともあった。この時はいつでも避難できる準備を整え、銃声や爆発音が鳴り止むのを部屋で待っていた。だが、今回の約1週間のカブール滞在中、把握している限り、複数の死傷者が出るようなテロはなかった。一方、取材した複数の市民は「タリバンが“ISを掃討する”という名目で、敵対したアシュラフ・ガニ政権や政府軍関係者に報復している」と明かした。“IS掃討”を理由にすれば、超法規的な襲撃や殺害も許されるというわけだ。こうしたことが実際に起きているかどうかは判然としないが、恐怖を感じている市民が多数いるのは間違いない。アフガニスタンは“文明の十字路”と呼ばれ、古くから東西の交易路として栄え、多様な人種が共存している。経済の窮状を反映してか、以前より子供の物乞いが増えた印象を受けたが、車の窓ガラス越しにお金を求めてきた一人の少年は、青い瞳で金髪だった。本来は豊かな文化を持つ国が、事実上、40年以上も戦乱状態にあり、貧困と混乱に苦しんでいる。旧タリバン政権下の2001年に破壊されたバーミヤンの大仏に代表されるように、遺跡も多く、治安さえ安定していれば観光産業も盛んだっただろう。1960~1970年代のカブールには、欧米等からも多くの若者らが訪れた。ここに来るといつも、今の窮状にやりきれなさを感じる。そして、これまでとの最大の違いは、街の至る所にタリバンの旗が掲げられ、タリバンの兵士が堂々と通りを歩いていたことだ。政府機関の建物は、タリバンの攻撃に備えてコンクリート製の高い防御壁に囲まれていたが、今はその監視塔からタリバンの兵士が下を見下ろし、警戒している。テロリストとされた人々が統治者に変わったわけだが、その違和感は簡単には拭えなかった。一方で、橋の下や道路の中央分離帯にしゃがみ込む男たちの姿は、以前と変わらなかった。地元ジャーナリストによると、車座になって麻薬を使っているのだという。アフガニスタンは、アヘンやヘロインの原料となる芥子の世界最大の生産国だ。世界の生産量の8割以上がアフガニスタン由来とされる。タリバンは芥子農家からの上納金や密売の収益を資金源の一つにしていたとみられ、国連は麻薬ビジネスでタリバンが2020年に得た収入は約506億円に上ると推計している。ただ、タリバンは実権掌握後、麻薬の製造や密輸をゼロにする方針を表明。複数の海外メディアは、タリバンが麻薬常習者を強制的にリハビリ施設に入れる等していると報じていたが、問題の解決には程遠いと感じた。
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